2025年9月12日

渋谷歯医者矯正歯科の澤田尚哉です。
本日のブログのテーマは『高齢者の誤嚥性肺炎と歯の関係 〜お口の健康が命を守る〜』です。
高齢者にとって「肺炎」は非常に身近で、時に命に関わる病気です。特に、65歳以上の方に多い「誤嚥性肺炎」は、実はお口の状態と深い関係があることをご存じでしょうか?
今回は、誤嚥性肺炎と歯・口腔ケアのつながりを、わかりやすく解説していきます。
誤嚥性肺炎とは?
通常、食べ物や飲み物は食道を通って胃に入ります。しかし、高齢になると飲み込む力が弱まり、食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。これを「誤嚥(ごえん)」といいます。
その際に唾液や食べ物に含まれる細菌が肺に入り込み、炎症を起こすのが誤嚥性肺炎です。
つまり、「飲み込む力の低下」と「口の中の細菌」が重なって起きる病気です。
高齢者に多い理由
皆さんは、サルコペニア、フレイルなどの言葉は聞いたことはあるでしょうか?
サルコペニア:加齢や病気によって 筋肉量・筋力が低下した状態 のこと。特に 下肢の筋肉が落ちる → 歩行速度が遅くなる → 転倒・寝たきりにつながる ことが問題になります。また 舌・咀嚼筋・嚥下筋といった「口や喉の筋肉」も衰えます。
フレイル:身体的な衰えだけでなく、精神・社会的な脆弱性も含む広い概念のことです。
このように高齢になればなるほど、筋力の低下によって嚥下機能が低下し、飲み込みが弱くなったり、異物が入ってもむせにくくなり、気づかないうちに細菌が肺に入ってしまったり、自分でしっかり歯磨きができないため、お口の中に細菌が増えたりするようなことが起こりやすくなります。
歯や口腔ケアが誤嚥性肺炎を防ぐ
実は、口の中には大量の細菌が存在しています。
若い時は唾液の働きや歯磨きによってバランスが保たれていますが、高齢になると環境が悪化しやすくなります。
筋力の低下による清掃不良。唾液が少ないドライマウスなど、口腔内の細菌が増殖しやすくなり、誤嚥したときに肺に入る菌の量も多くなります。
ここで大切なのが「口腔ケア」です。
実は、歯科医師や歯科衛生士による専門的な口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎の発症率や死亡率が下がるという研究結果が数多く報告されています。
具体的なケア方法
歯磨き・舌磨き:舌の上にたまる舌苔は細菌の巣になりやすい
入れ歯の清掃:毎食後に外して洗うことで細菌数を減らせる
定期的な歯科受診:歯周病や虫歯の治療だけでなく、噛む・飲み込む機能の評価も可能
口腔リハビリ(嚥下体操や口腔体操):飲み込みや咀嚼の力を維持する
歯の本数と誤嚥性肺炎のリスク
実は、歯がどれくらい残っているかも誤嚥性肺炎のリスクと関連しています。
歯が多く残っている人ほどよく噛める → 唾液が出やすい → 細菌が洗い流されやすいというサイクルになります。
歯を失い、入れ歯や総義歯を使っている方は清掃が不十分だとリスクが高まります。
つまり、歯を残すこと自体が誤嚥性肺炎の予防につながるといえるのです。
ご家族や介護者にできること
高齢の方が自分で十分なケアを行えない場合、家族や介護者のサポートが欠かせません。
・歯磨きの介助
・入れ歯の毎日の洗浄
・定期的に歯科医院を受診してもらう
・食事の際には姿勢を整え、少量ずつ飲み込む工夫
これらを実践するだけでも、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができます。
まとめ ― 口から命を守る
誤嚥性肺炎は高齢者の健康を大きく左右する病気です。
そしてその予防には、歯とお口の健康管理がとても重要です。
・口腔内の細菌を減らすこと
・噛む力や飲み込む力を維持すること
・定期的な歯科受診と専門的ケアを受けること
これらの積み重ねが誤嚥性肺炎の予防につながります。
「歯は食べるためのもの」と思われがちですが、実は全身の健康や命に直結する器官でもあるのです。
ご自身やご家族の将来のために、ぜひ歯と口のケアを大切にしてください。