
親知らず
親知らず
「親知らず」は、顎(あご)の一番奥に生える歯で、永久歯のなかで最後に発育します。
正式には第3大臼歯(だいさんだいきゅうし)と呼びますが、「智歯(ちし)」とも呼ばれています。「親知らず」には個人差があります。
はじめからない方や上下左右の4本が揃っていない方、また、まっすぐに生えてくるとは限らず、横や斜めに生えたり、埋まったままだったりします。他の歯と同じように正常に生え、しっかりかみ合っている場合はとくに問題はありませんが、悪影響をもたらすような生え方の場合は、抜歯を検討する必要があります。
親知らずは必ず抜かなければいけないものではありません。
健康で真っ直ぐ生えている親知らずは、将来入れ歯やブリッジの土台として使ったり、どこかの歯が抜歯になったときの移植ドナー歯として使えることもあります。一方で、歯ブラシが届きにくいため汚れが溜まりやすくむし歯になったり周囲の歯肉が腫れて痛むことも多いので、トラブルの種になる場合には抜いたほうがいいです。特に横向きで頭を出している親知らずは要注意です。
抜いた方がいい | 抜かなくてもいい |
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「痛くなったら抜けばいいの?」というご質問をよく受けますが、痛くなったときは親知らずだけでなく、その手前の歯も一緒に抜かなくてはいけない状況になっていることもあり、また抜歯も歯がぼろぼろになってしまうと非常に困難になります。これらを踏まえて、むし歯になる前に予防的に抜歯することもあります。
歯科医師と相談の上、抜歯のメリットとデメリットを比較検討し、メリットが上回ると判断した場合が抜歯の適応となります。
「親知らず」のトラブルは顎の大きさと関係性があります。
現代人の顎の骨は昔と比べ小さくなってきていますが、歯の大きさはあまり変わっていません。
そのため、一番最後に生えてくる「親知らず」は、スペースが足りず、正常に生えてこない場合が多いのです。
斜めに生えてきたり、一部分だけ頭を出していたり、顎の中で水平で埋まったままということもあります。
そのままだとむし歯や歯茎の炎症を起こしたり、歯並びの悪化や顎関節症の原因になったりすることもあります。
現代の若い世代の方はもともと親知らずがない方が増えております。
真っ直ぐ生えている
むし歯を繰り返したり、歯肉に悪影響を与えていれば抜歯を検討します。これらの兆候がなく、他の歯のように真っ直ぐに生えていて噛み合っている状態であれば、抜歯をする必要はありません。
横向きに生えている
横向きに生えていて、歯肉の外に歯の一部だけ露出している状態です。汚れが溜まりやすいので、親知らずや手前の歯にむし歯ができたり、周囲の歯肉が腫れて痛くなったりするリスクが高いです。最も抜歯を検討すべき生え方です。
完全に埋まっている状態
外からは確認できず、完全に歯肉の中に埋まっている状態です。多くの場合で問題にはなりませんが、周囲の組織に悪影響を与えたりするときは抜歯も検討します。
「親知らず」の痛みは、生えてくるときに歯肉が他の歯によって傷つけられたり、細菌に感染し炎症を起こしたりすることによって生じます。
「親知らず」は歯肉が部分的に被ることで不潔になり、炎症が起こりやすくなります。
この歯肉の炎症を智歯周囲炎(ちししゅういえん)といい、20歳前後の方によく見られる症状です。
口が開けられなくなったり、痛みとともに熱が出たりすることもあります。
「親知らず」が仕事や勉強の追い込み時に痛むことが多いのは、疲れやストレスなどで身体の抵抗力が落ちたときに炎症が起こりやすいためです。
「親知らず」はしっかり磨けません
横向きや斜めに生えている場合、一生懸命磨いても歯ブラシがうまく当たらずに、「親知らず」や手前の歯がむし歯になる可能性が高くなります。
歯肉が炎症を起こします
「親知らず」に被っている歯肉が智歯周囲炎を起こします。これが口臭の原因にもなります。また、「親知らず」の周りに汚れがたまることで、手前の歯ぐきも歯肉炎にかかりやすくなります。
歯ぐきを噛みやすくなります
上顎の「親知らず」が生えてくると下顎の歯ぐきを噛んでしまい、炎症や腫れの原因となります。
歯並びを悪くすることがあります
横向きや斜めになっている「親知らず」が手前の歯を強く押すことで、歯並びやかみ合わせが悪くなる場合があります。
顎関節症の原因になることがあります
「親知らず」によってかみ合わせが悪くなると、咀嚼時に左右の顎がバランス良く使われないため、片方の顎に負担がかかり、顎関節症を引き起してしまうことがあります。
「親知らず」が完全に顎の骨の中に埋まっていて症状がない場合や、痛みもなく周りの歯や歯列に影響がない場合は抜歯の必要はありませんが、明らかに悪影響が出ている場合は抜歯をおすすめします。また、日頃から歯科健診を受けて、不具合の兆候がみられる「親知らず」を早期に発見し、適切な処置をしておくことも大切です。
抜歯がすすめられるケースには、主に以下のようなものがあります。
難易度:★☆☆
上顎の親知らずは比較的真っ直ぐ生えてくることが多いです。
上顎の奥歯は頬の筋肉が歯の側面に近接しているため、非常に歯ブラシを当てるのが難しく、むし歯になることが多い場所です。
上顎の骨は柔らかいので抜歯は比較的容易なことが多く、痛みや腫れも少ないです。しかし、むし歯が大きくなってから抜こうとすると、器具を奥深くまで入れる必要があり、抜歯が難しくなることもあります。
難易度:★★☆
下顎の親知らずは上顎の親知らずに比べると、真っ直ぐ生えてくることが少ないです。
周囲の歯肉が腫れてしまうことが多いです。下顎の骨は硬く、根の大きさや形態により上顎の親知らずに比べると抜歯はやや大変です。
難易度:★★★
親知らずの中で最も注意が必要です。歯ブラシが届きにくいため汚れが溜まりやすくむし歯になったり周囲の歯肉が腫れて痛むことも多いです。また、親知らずだけでなくその手前の歯までむし歯になることも珍しくありません。
抜歯の手順としては、麻酔を効かせた後に歯肉を切開し、歯を削って分割し、小さくして取り出します。抜歯後は縫合して、術後1週間程度で抜糸します。一定の口腔外科に対する知識、経験がないと難しい手術です。
「親知らず」の抜歯を行う際に重要なことは、状態を正確に把握するということです。抜歯時に神経に触れたり、太い血管を傷つけたりしないために、「親知らず」の周囲の確認が必須となります。歯科用CTを活用することで、「親知らず」の部位を立体的に把握でき、神経や血管の位置を考慮しながら治療を進めることが可能です。埋まっている「親知らず」でも、必要以上に歯ぐきを切開したり、顎の骨を削ったりせずに抜歯ができます。
あまりにも神経に近い親知らずは口腔外科のある総合病院をご紹介させていただきます。
抜歯は、麻酔を十分効かせて行いますので、抜歯中に痛みを感じることはほとんどありません。まず、表面麻酔をしっかり効かせてから注射の麻酔を行います。万一、抜歯中に痛みがある場合は、麻酔を追加し痛みがない状態にします。痛みがあるうちは抜歯をしませんのでご安心ください。
カウンセリング
神経や血管の位置を歯科用CTで確認
抜歯準備
表面麻酔と注射麻酔で痛みを抑える
「親知らず」を抜歯する
抗生剤と止血剤を填入して縫合
翌日の消毒
抜歯の翌日は、出血・細菌感染などの確認と消毒を行います。状態によって薬を調整します。
1週間後に抜糸
抜歯後、2~3日は安静にしましょう
術後2~3日は腫れや痛みがあります。1週間ほど痛みや腫れが続くこともあります。また、かさぶたになるまでは出血しやすい状態になります。アルコールや運動、長時間の入浴など血行が良くなるようなことは避け、安静にしましょう。血が止まらない場合は、清潔なガーゼやティシュなどを丸めて穴の上に置き、しっかり噛むことで圧迫止血をします。抜歯当日は少量の血が付着する程度は正常です。
抜歯の穴の内部は触らないようにしてください
抜いた穴の中にできるゼリー状のかさぶたを、口に水を含み転がすなどして洗い流さないようにしてください。かさぶたを汚物と思って剥がしてしまうと、治癒期間が延びたり、傷口が細菌に感染したりすることがあります。
腫れた時には軽く冷やす
下顎の「親知らず」を抜いた時に起こりやすいのが「腫れ」です。この腫れは軽く冷やすことで引くことがあります。頬の外側から冷却ジェルシートを貼ることも効果的です。
1週間以上痛みが継続するときは注意が必要です
かさぶたが綺麗に出来なかったり剥がれたりした場合は、抜いた穴がなかなか塞がらず、骨の一部分が外から見えることがあります。この状態をドライソケット(治癒不全)といい、痛み止めを飲まないと耐えられない痛みが、1週間以上続くことがあります。目安として2週間経過しても痛みの状態が改善されなければドライソケットの可能性が高いので、受診してください。
普通抜歯(骨を削る処置をせずに抜ける場合) | 約1,000円〜2,000円(税込) |
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難抜歯(骨を削ったり、親知らずを分割したりする必要がある場合) | 約3,000円〜6,000円(税込) |
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