
インプラントのリスクと対策
インプラントのリスクと対策
インプラントはメリットの多い治療ですが、他の治療と同じようにリスクも存在します。
インプラントは外科手術ですので、術後に痛みや腫れを少なからず伴います。
この術後の痛みや腫れの程度はかなり個人差が大きく、ほとんど痛まない方もいれば1週間ほど腫れてしまう方もいます。
一般的には1~3日程度が痛みや腫れのピークですが、骨の移植を伴わない手術であれば、親知らずの抜歯よりも低侵襲で痛みが少ないことがほとんどです。骨の移植を伴うような手術になると、術後に痛みや腫れが強く出ることがありますが、これらの症状は時間とともに必ず落ち着いてきます。
まれにあざ(内出血)になることもありますが、1~2週間で自然に消えます。
顔の腫れや皮膚の赤みが気になる方には、冷却パックを術後24時間以内に使用することをおすすめします。
また術後は必ず鎮痛薬と抗生剤の処方をしますのでそちらを服用していただくことで痛みや腫れを最小限にします。
(*)術後のトラブルを防ぐために、以下の点にご注意ください
術後の注意点 | 解説 |
---|---|
強くうがいをしすぎない | 血餅(かさぶた)が取れて出血する恐れがあります |
飲酒・喫煙を控える | 血流が悪くなり、傷の治りを遅らせる原因に |
熱い食べ物・辛いもの | 血流が促進され、腫れや出血を助長する可能性あり |
柔らかく冷たい食事 | 豆腐・ヨーグルト・スムージーなどがおすすめ |
処方された薬は指示通りに | 抗生物質・鎮痛薬の服用は重要です |
早期の対応で、多くのトラブルは未然に防げます。インプラント手術後の痛みや腫れは一時的なものです正しいケアを行えば、ほとんどの方が1週間以内に回復されます心配なことがあれば、どんな些細なことでもご相談ください。
インプラントは保険外治療になるため、治療費が高くなります。
治療費は医院により違いがありますが、一般的には総額で1本40~60万円程度となっています。
中には「格安インプラント1本15万円~」という広告を目にすることもありますが、長持ちしなかったり、いざ治療を始めてみたら別途オペ代や仮歯代、被せ物代やオプション費用がかかり、最終的には50万円を超すようなケースも珍しくありません。
当院では、わかりやすい明瞭会計を設定しています。
「インプラント体」+「被せ物」+「必要な場合はオプション」=インプラント治療の総額
診察代、オペ代、型取り代、消毒・薬代などは、全て上記に含まれています。
もちろん医療費控除も使えますのでそちらもご活用ください。
インプラント手術をする際に、気をつけなくてはいけない神経や血管があります。
以下が特に重要なものです。
下歯槽神経
下顎骨の中にあり、主に顎や頬・口唇の感覚を司る神経
オトガイ孔
下顎小臼歯の歯根先端付近にある下歯槽神経の出口
舌動脈
下顎の内側(舌側)に走る大きな動脈
上顎洞
目の下にある空洞で副鼻腔のうちの1つ
後上歯槽枝
上顎にあり、上顎、側頭部、頬部、鼻腔の知覚を司る神経
術前の3D-CTで確認し、確実な診査を行えば神経損傷は起こりません。
しかしインプラント体の長さを見誤って深く埋入してしまい下歯槽神経を傷つけると、神経麻痺が起こります。
下歯槽神経麻痺が起きると、顎や唇に常に麻酔が効いているようなしびれが残ってしまいます。
しっかりと術前に診査し、下歯槽神経から2~3mm以上離れた位置にインプラント体を埋入すればしびれなどの症状が起こることはありません。
もちろん下歯槽神経に限らず、術前に3D-CT撮影をしてこれら解剖学的に重要な神経や血管の位置を細かく把握することで、安全に手術が行えます。
精密な診査の結果、神経や血管にインプラント体が近接しそうな場合にはガイドを用いるご提案をしたり、無理にインプラント手術を進めるべきではありません。
一方で、骨の厚みが薄い場合や上顎洞が近い場合は、GBR法や上顎洞底挙上術(ソケットリフト)を併用することによって、骨の厚さを回復できることがあります。
インプラントは入れ歯と違い、つけ外しをする必要がないので装着時の違和感はかなり少ないです。
またインプラントは顎の骨に固定されていますので、自分の歯と近い感覚で食べることができます。
ただし天然歯は歯と骨の間にある歯根膜というクッションの繊維で咬合圧(噛み合わせた時にかかる力)を感知しますが、
インプラントには歯根膜がないため、噛んだ感覚の違いを感じる方もいます。
そのためインプラントを入れた直後は、噛んでいる感覚が弱く違和感が出ることがありますが、
長期的に使用していくうちにほとんどの方が違和感なく食事ができるようになります。
インプラント治療に限った話ではありませんが、メンテナンスや日々の歯ブラシは長期的な安定のために重要です。
インプラントは人工物なので虫歯にはなりませんが歯周病にはなりますので、他の歯と同じようにメンテナンスや日々の歯ブラシが必要です。
インプラントは天然の歯と少し形態が異なるため、一部においては歯間ブラシやフロス、糸ようじなどを使用する必要があります。
「何歳までインプラントできますか?」これはよくいただく質問の1つですが、インプラントはいくつになっても可能です。
全身的な疾患がなく、健康状態が良好で顎の骨がしっかりしていれば、年齢にかかわらずインプラント治療は可能です。
逆に、未成年者にはインプラント治療は行えません。顎の骨の成長が完了する20歳前後まで待ちましょう。
1~3%の確率で、全身状態などに問題がなくても骨と埋入したインプラント体が結合しないことがあります。
(糖尿病(血糖コントロール不良)や骨粗鬆症、自己免疫疾患などが影響することがあります。
また喫煙は骨の血流を悪化させ、インプラントの成功率を下げる大きな要因です。)
この場合は、新しいインプラント体を再度埋入することで治療が可能です。
再治療の費用が追加でかかることはありませんのでご安心ください。
患者様ご自身のご協力も、成功率を高める大切な要素です。
ポイント | 内容 |
---|---|
喫煙の中止 | 少なくとも術前2週間・術後1ヶ月は禁煙が理想です |
術後指示の厳守 | うがい・飲酒・硬い物を噛むことなどに注意 |
正しいブラッシング | 感染予防のために、清潔な口腔内環境を維持 |
定期検診 | 早期の異常発見が、再治療を防ぐカギになります |
相談・カウンセリング
まずは、今感じている不安やご希望を自由にお話しください。
「どんな治療が自分に合っているのか分からない」といった疑問にも丁寧にお応えします。
また、インプラントは外科処置を含むため、持病の有無や服用中のお薬についても詳しく伺います。
お口全体の検査・むし歯・歯周病治療
インプラント治療は、土台となるお口の健康状態が非常に重要です。
むし歯・歯周病、噛み合わせ、歯ぎしりの有無などを総合的に検査し、必要があれば先に治療を行います。
また、抜歯が必要な歯がある場合、抜歯後2〜3ヶ月の治癒期間を設け、インプラント手術に最適なタイミングを見極めます。
この期間に、他の部位の治療も同時に進めていきます。
精密検査・3D-CT撮影
インプラント治療では、顎の骨の状態を詳細に把握することがとても大切です。
当院では歯科用3D-CTを使用して、骨の高さ・厚み・神経や血管の位置まで立体的に確認し、安全で正確な治療計画を立てます。
インプラント埋入手術・一次オペ
局所麻酔を使用して、痛みの少ない状態で手術を行います。
歯肉を丁寧に切開し、インプラント体(人工歯根)を顎の骨に埋め込み、縫合します。1本の埋入であれば、30〜45分ほどで終了します。
(*)ご希望の方には、静脈内鎮静法(リラックス麻酔)も対応可能です。
ウトウトしている間に手術が終わるため、「手術が怖い」という方にも安心です。
骨とインプラント体の結合期間
手術後、インプラント体と骨がしっかりと結合するまで待ちます(オッセオインテグレーション)。 上顎では約4〜6ヶ月、下顎では2〜3ヶ月が目安です。
この期間中も、必要に応じて仮歯を使用するなど、日常生活に支障のないよう配慮いたします。
インプラントの頭を出す手術(必要な場合)・二次オペ
埋入時にインプラント体を完全に歯肉内に埋めた場合は、歯肉を少し切開して、インプラントの頭を出す処置を行います。 処置は局所麻酔下で行い、時間は5〜20分程度と短時間で終了します。
被せ物の作製・装着
インプラントと骨が結合した後、歯型を採取してオーダーメイドの人工歯(被せ物)を製作します。
前歯など審美性が求められる場合には、仮歯で歯茎の形や歯並びを微調整しながら、自然な見た目を追求します。
被せ物は、インプラント専門の歯科技工士と連携し、機能性と美しさを兼ね備えた仕上がりを目指します。
定期的なメンテナンス
インプラントは「入れて終わり」ではありません。
定期的なメンテナンスによって、長期的に快適に使っていただけるかどうかが大きく左右されます。
インプラント周囲に汚れが溜まると「インプラント周囲炎」という歯周病のような状態を引き起こすことがあります。当院では3〜4ヶ月ごとの定期検診で、清掃と咬み合わせのチェックを行い、インプラントを守る体制を徹底しています。
(*)インプラントはメンテナンスが重要です。
インプラントのメンテナンスでは、通常の歯のクリーニングに加えて、以下のようなことを行います。
インプラント周囲炎等の有無の診断(視診、触診、レントゲン検査、ポケット検査など)
※インプラントの清掃法の再確認と指導方法をお伝えします。
専門器具を使った、インプラントと歯ぐきの境目のクリーニングを行います。
必要に応じて、人工歯を外しての確認と消毒清掃を行います。
ガイドとは、撮影した3D-CTをシミュレーションソフトで解析し事前に歯科医師、技工士さんと打ち合わせを行うことで、顎の中にある重要な神経や血管を避けた安全な位置、角度にインプラント体を埋入ででるように設計されたり、
その結果、被せ物をきれいに作ることができるようにする為の手術用マウスピースです。
このガイドを用いて行う手術をガイデットサージェリーと言います。
ガイドはコンピュータにより精密に設計され、誤差1mm以内と非常に精度が高く手術時の正確さを上げることができ、
大幅な手術時間の短縮もできます。
ガイドを使用しインプラント体を正確な位置に埋入することで、埋入角度不良によるインプラントの早期喪失や、
下歯槽神経の損傷、上顎洞への穿孔などの重篤な事故を防ぐことができます。
また、前歯などの審美領域では被せ物をきれいに作る上でも活躍します。
型取り・3D-CT検査
口腔内スキャナーにて歯型を取ります。また、顎の骨の状態や、神経、血管の位置を細かく確認するために3D-CTを撮影します。
治療計画の立案
歯型と3D-CTデータの重ね合わせ(マッチング)を行い、骨の厚みや神経、血管までの距離を測った上で、
埋入するインプラント体の種類や位置、角度をコンピューター上でシミュレーションします。
歯科医師とインプラント専門の歯科技工士とともに、最終的な被せ物の位置や形態を予想した上で手術計画を立てています。
ガイドの作成
シミュレーションに基づき、3Dプリンターによってガイドが製作されます。
ガイドを用いてインプラント体埋入
ガイドに沿ってインプラント体を埋入します。
インプラント体を正確な位置に埋入できる
ガイドを用いない(フリーハンド)で埋入は、狙った位置、角度から多少のズレが生じることは珍しくありません。ガイデッドサージェリーではガイドに沿ってドリルを進めるので正確な位置にインプラント体を埋入することができます。
例えるならば、フリーハンドのインプラント手術は車の運転のようなものです。慣れたトドライバーが運転すれば車でも道路をはみ出すことはありませんが、初心者や予期せぬアクシデントが起きると経験者でも事故を起こすことがあります。
一方でガイデッドサージェリーは電車の運転に例えられます。電車がレールの上を走ることと同じように、ガイデッドサージェリーは決められたチューブの中を沿ってドリルしていくため、安全な手術が可能です。
手術時間が短い
精巧に作られたガイドに沿ってインプラント体を埋入するので、
通常のインプラント手術に比べ手術時間を短縮することが可能です。
手術時間が短く済むことで、身体的な負担や治療に対する恐怖心や不安感などの精神的な負担を軽減することができます。
ガイド製作の費用がかかる
ガイドを製作するには、技工費用やインプラントの位置を決めるシミュレーションソフトのライセンスフィーなどがかかります。
当院では埋入本数が1本まで55,000円、以降1本追加ごとに11,000円の製作費がかかります。
手術時に口を大きく開ける必要がある
ガイドはやや厚みのあるマウスピースでこれを装着しながらの手術となりますので、通常の手術よりも大きく口を開ける必要があります。とはいえ、ガイデッドサージェリーでは手術時間が比較的短くなるので、負担はそれほど大きくありません。
ガイデッドサージェリーが推奨される場合
多くの場合ではガイドを用いずにインプラント手術を行いますが、必要に応じてガイドを用いることがあります。
前歯などの審美領域
インプラント体の埋入角度や深さによって、被せ物の形態は左右されます。特に前歯のようによく見える部位では、きれいに仕上げるためにガイドを用います。
骨が薄い場合
顎の骨の厚みは個体差がかなり大きいです。
一般的には奥歯の方が厚みがあり、前歯は薄い構造をしています。
さらに生まれ持った骨格的な要素や、歯を失ってからどれくらい時間が経っているかなど、様々な要素により骨の状態は人それぞれです。
その中で骨が比較的薄い部位や解剖学的リスクが高い部位にインプラント体を埋入する際には、角度や深さが重要になりますのでガイドを用います。
インプラント体を複数本埋入する場合
複数本埋入したインプラントに対して被せ物を繋げて治療する場合、インプラント同士の角度がある程度揃っている必要があります。角度の精度を上げるために、ガイドを用います。
ガイデットサージェリーは精度が高いものですが、全ての症例においてガイデットサージェリーを併用する必要はないと考えています。通常のインプラント手術においては、ある程度の経験がある術者であればガイドと変わらないレベルのインプラント手術が可能です。ただし、上記のような症例ではインプラント体の埋入位置が重要になるため、ガイドを使用しています。
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